チョコレートクラウン
作品紹介
時任叶輪(20)と時任こよみ(26)のふたりは、同じ家に生きている。
以前この家には千映(9)という家族が居たが、この夏に海の事故で亡くなってしまった。すぐに日常に戻る叶輪と、それに反比例するように生活がままらなくなるこよみは、千映の遺品整理に手をつける叶輪も拒む。こよみはある日から“千映が居る”生活を送りはじめ、仕事にも行くようになる。“千映が居ない”生活を過ごす叶輪は、こよみに今の自分を見てもらうことも、こよみが見ている千映を見ることもできない。できるのは、雨が降った朝に雨戸を閉めるのを手伝うことくらいだった。
夕方、大学帰りの叶輪は、いつもの公園で千映と遊ぶこよみに感情的になりあたってしまう。しかし買い物をして帰宅するとこよみが、今の叶輪、に話しかけてくる。千映とチョコレートを買ってきたのだと小さな箱を見せられる。叶輪が中身を見ると、ただの小石が3粒ならんでいる。怪訝に思いながらもおそるおそる1粒を食べると、それはたしかに叶輪の口の中に溶けていく。隣の部屋を見ると“千映が居る”。千映にことばを伝え、こよみに謝る叶輪。
翌朝、叶輪は、こよみが外から雨戸を開ける音で目を覚ます。
映画(ドラマ、家族)/2021年/カラー
この映画は、3回生の中編制作ゼミで、製作過程のすべてにおいて「他者(観客を含む)」の視点を考えながらつくるというシラバスのもとに製作した作品です。自分と他者のものの見え方、捉え方は異なるという当たり前のことから、自分の視界についてもほんとうであるのか? ということを問いはじめました。
中身としては、幻覚や夢といった、理由づいていて“覚める”ことのある表現ではなく、ただそれぞれが自分の時間を生きていて、見えているものが違うふたりを描くことで、「他者の世界をまず否定しないで欲しい」「自分のことも外側から見つめてみて欲しい」という普遍的なテーマを掲げました。
こよみが見ている千映はただの幻覚なのか? 叶輪が渡されたのは小石なのか? 多面的に、観て、考え続けて欲しい映画です。
CAST
岡本大地/時任叶輪(ときとう とわ)役
Okamoto Daichi
2000年11月7日生まれ。静岡県出身
京都芸術大学 中編制作作品として、
2021年『チョコレートクラウン』に出演。
京都芸術大学 卒業制作作品として、
2019年『静謐と夕暮』(梅村和史監督)
2023年『ともしび祈』(伊澤萌音監督)
2023年『さみしくない道を選んで帰る』(柏原音生監督)に出演。
原光多郎/時任こよみ(ときとう こよみ)役
Hara Kotaro
2000年5月25日生まれ。愛知県出身
・映画『チョコレートクラウン』(2021)時任こよみ役
・映画『さみしくない道を選んで帰る』(2022)
小学生の頃から映画や舞台が好きだったため、高校ではデザイン工学を学ぶ。
次第に映画のセット、宣伝用のフライヤーなど少しでも携われる仕事をしたいと考え映画学科へ進学するが、入学してからは自身が前に出たいという気持ちが強まり、俳優部を志すことを決意。
CREATOR
柏原音生/演出・撮影ほか
Kashiwabara Neo
2001年2月14日生まれ。東京都出身。
高校時代は都立総合芸術高校で日本画を学んでいたが、いくつかのきっかけで映画製作の道を志す。
大学1回生時、北白川派第8弾『CHAIN/チェイン』(福岡芳穂監督)で初めて現場に足を踏み入れる。次第に自身で演出をしてみることに興味を持つようになり、3回生時に中編制作ゼミで本作の演出・撮影を経験する。
助監督作品に『浮かぶかたつむり』(2020)、『WATCH OVER!!』(2021)、
初監督作品に、京都芸術大学映画学科卒業制作として『さみしくない道を選んで帰る』がある。
作品へのメッセージ
撮影は計5日しかありませんでしたが、時任家へのゆきしな、商店横の灰皿にはとても世話になりました。
とらえ逃したらどうしよう、そう思うと若干視界がぼやけたりもしましたが、そのくらい終始張り詰めた空気は感じられる、というかそれしかない映画になったと思っています。
それが非常にきつい、と感じるひともいるかもしれません。
けれど他者と接するということは、
他者のとらえるものを見つめようとすることは、
実はこれくらいの力強さで、姿勢でいるべきなのかもしれないなぁと、
この映画を自分で観返したときに考えたりします。
ぼうっと観られる作品ではありませんが、なにかを諦めたくないときにぜひ。
STAFF
竹内櫻、柏原音生、岡本大地、原光多郎、長嶋佑記、大岩明日香、冨山侑起、奥雄翔、石真治、山本優里
製作
時任組
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